つれづれと雑文

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「withコロナ社会」において学校の先生が出来ることについての考察②~イシューを分解し,ストーリーラインを組み立てよう~

※今回のエントリーは前回の続編なので,①を未読の方はまずこちらをお読み下さいm(_ _)m

dan-makino.hatenablog.com

 前回のエントリーで,イシュー(今本当に答えを出すべき問題)を

 

「学校というハコが機能不全となる状況において,学校の先生達は,受け持つ子どもたちに教科を学ぶ場(≒従来の教室での授業の場)を提供するために,何を行うべきか」

 

と位置付けました。今回はこのイシューを分解し,ストーリーラインを組み立てていきます(下図の赤枠内)。

 

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「イシューからはじめよ」p.34より引用(赤枠は筆者)

赤枠内をより詳しくした図が,下図になります。

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「イシューからはじめよ」p.105より引用

 

では,順番に論考を進めていきます。

 

1.イシューを分解する

上の図では,「大きなイシューを解けるサイズまで分解する」とあります。今回のイシューは,まずは最もシンプルな形で分解します。そう,小学校では「学年」で分解し,中学校(※)は「教科」で分解するのです。

※私は現場経験が無いのですが,高校も中学校同様,教科で分解する形になるのでしょうかね…?

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イシューの分解

当たり前だろ!という声が聞こえてきそうです(苦笑)。私が今回このような分解をした理由を,3つ述べます。

 

<理由①:MECEであること>

MECE」とは「ダブりもモレもないこと」を指します(詳しくはググって下さいm(_ _)m)。ただ,この図だとモレているのが特別支援教育(以下「特支」)です。学校によって,学年に特支の先生が所属している場合と(学年横断の形で)特支チームが存在する場合があるかと思います。後者の場合は,特支は特支のチームでイシューの解を検討するのがよいかと考えます。

 

<理由②:小学校では発達段階の違いが,中学校では教科特性の違いがイシューを解く際のキモになる考えられること>

今回のイシューの解として大きな役割を果たすのがテック(≒ICT技術)なのですが,当たり前ですが小学校1年生と6年生ではリテラシーが全然違いますよね。例えば「保護者にメールでIDを配って,家庭の端末で特定のサービスにログインしてもらう」ということを考えた場合,6年生なら自力で何とか出来る子もいそう(大半が出来そう?)ですが,1年生で親の助け無しに出来る子がいるとは考えづらいですよね。小学校では学年毎に子供の発達段階が大きく異なるので,学年ごとに検討する形がよいと考えます。

一方で,中学校では小学校と比べて,教科の専門性がより高くなります。もちろん中1と中3では知識も経験も発達段階も異なりますが,それよりも教科特性の違いで分解すべきだと考えます。具体的には,国語部会(国語専門の先生の集まり)や数学部会といった集まりで検討する形になるでしょうか。そしてこれは私の願望込みで述べますが,是非中学校の専門の先生に体育や美術といった技能教科の解を見い出して,エッセンスを小学校に降ろして欲しいんですよね。小学校の現場からの声としてなのですが,算数や社会といったいわゆる主要教科は,海外&国内の先行事例などから何となくの見通しがあるんです。反転授業とか。でも,たとえば,学校に集まらずに体育の教科で培われる資質能力を育む学びのイメージが出来ないんです。少なくとも,私には。なので,是非中学校の先生には前例の無い画期的な学びのデザインを描いていただけたらと思いますm(_ _)m(無責任な投げっぱなしで申し訳ないです…)

 

<理由③:学級担任制か教科担任制かの違いがあること>

日本の多くの小学校は学級担任制(担任の先生が自分の学級の全教科を担当する)で,中学校は教科担任制(教科の専門の先生が複数の学級の授業を担当する)です。なので,小学校では「学年」を単位とした小集団がとても強いつながりを持ちます。一方で,中学校ではもちろん学年という単位もあるのですが,同じ教科の担当の先生同士のつながりも小学校以上に,あります。イシューの解を検討する集団として,既存の教師集団のつながりをそのまま使えばいいじゃないか(わざわざ崩す必要も無いんじゃないか)というのが,私の考えです。(なお,最近は小学校でも高学年では教科担任制の学校が増えてきていますので,教科担任制の場合,小学校高学年は教科ごとの分解の方がよいのかもしれません。)

 

以上3点が,私が今回のシンプルな分解を採用した根拠でした。

 

ですが,実はイシューの分解はこれでは終わりません。前回のエントリーに,このような図があったのを覚えておられるでしょうか。

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前回のエントリーでも示した図

ざっくり振り返ると,子供たちが今までのようには登校できない状況がしばらく続くだろうから,その状況を今から想定しておこうね,という話でした。今回,イシューの分解にあたり,この図を作り直してみました。

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「withコロナ社会」において学校が置かれる状況

信号機でたとえてみました。現在,在宅勤務になっている先生方の勤務校の多くは赤信号の状況だと思います。普通の信号機と違うのは,普通赤が終わると青になるのですが,赤が青になることは無く,黄色になるという点です。今の状況で,たとえ毎日登校になったとしても,3密を避けなくてもいい(=コロナ感染の広がりを気にしなくてもよい)状況は当面は想定できないですよね。前回との一番の違いは,この黄色の状況の定義です。登校頻度に限らずにこのように定義すると,元通りの青の状況に戻るのは当面考えづらいことがわかるかと思います。

 

矢印は,コロナ禍においてこれまで日本全国の現場の先生方が振り回された変化&これから対応すべき変化を表しています。首相が法的根拠も無く突然「週明けから全国で休校してね。お願い!」って言い出したり,「えっ,明日の入学式中止ですか!?」(赤の矢印)ってなったり(苦笑)。今後は,黄色の矢印(例:「えっ,GW開けから学校再開ですか?今日5月1日ですけど!?)に対応することもあるでしょう。

 

また,気を付けなければならないのが,黄色の状況になったからといって全員の子供が登校する(出来る)わけではないという点です。具体的には,保護者の判断で子供を登校させない場合・学区に子供がいない場合などです。現に,私が担任している学級には,コロナ感染リスクを理由に教科書配布の1時間のみの登校に来なかった子供もいますし,両親とも医療従事者で止む無く遠方の祖父の家に行っている子供もいます。こういった子供たちの学びをどう実現していくのか,という点も担任教師としては忘れてはいけない視点だと考えています。

 

前回のエントリーでも強調したつもりなのですが,この2つ,黄色と赤を区別することはとても重要だと私は考えています。そして,いつ黄色から赤に,赤から黄色に変わってもいいように備えをしておくことも同じぐらい重要だと考えています。

 

今後もよく使う言葉になりそうなので,黄信号の状況・赤信号の状況にそれぞれ名前をつけておきたいと思います。

 

黄信号の状況⇒Phase Yellow(以下「フェーズY」)

赤信号の状況⇒Phase Red(以下「フェーズR」)

 

(厳密にはこれまで使ってきた「状況」はsituationなのですが,「フェーズ」(段階)という言葉が私にはしっくりくるので,置き換えましたm(_ _)m)

 

そして,各フェーズ毎にイシューの解が必要だということを表した図が,下図になります。

 

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フェーズYとフェーズR

 図にも描きましたが,フェーズYとフェーズRのイシューへの解はそれぞれ検討しつつも,シームレスに移行できるように考えておくことも大事だと考えています。これからも唐突に休校になったり学校が再開になったりすることが,今後予想されるからです。ちなみに私の場合は,勤務校が5/6まで休校(=フェーズR)で,且つ緊急事態宣言の特定警戒都道府県に指定されていることから,フェーズRが当面続くのではないかと(私は)考えています。ですので,まずフェーズRの解を模索して,少しずつでも形にしていって,それからフェーズYの解を検討しようと考えています。

 

 

2.ストーリーラインを組み立てる

 

「イシューからはじめよ」では,典型的なストーリーの流れとして次のように述べられています(p.125)。

 

1 必要な問題意識・前提となる知識の共有

2 カギとなるイシュー,サブイシューの明確化

3 それぞれのサブイシューについての検討結果

4 それらを統合した意味合いの整理

 

この流れに沿って,これまで述べてきたことを仮説的に並べてみます。

 

1 コロナ禍で学校が休校になって,授業が出来ていない。また,オンラインを活用した教育については,事例が海外・国内ともに豊富。

2 小学校では各学年/中学校では各教科において,受け持つ子どもたちに教科を学ぶ場(≒従来の教室での授業の場)を提供するために,何を行うべきか。

3 フェーズY/フェーズRのいずれにおいても、学校の先生が自分の目の前の子供たちの実態に応じてテックを効果的に用いることが出来れば,学校というハコが機能不全となる状況においても教科教育の質は維持できる,むしろより高い質の教育を提供することが出来る。

4 各学年/各教科におけるサブイシューの解を統合すれば,学校におけるイシューの解が求められる。学校における解が明確になれば,学校の設置者(公立校ならば行政)が行うべき施策(例:タブレット端末(←スペックなども?)やモバイルルーターの貸出)も明確になる。また「学校としてこんなビジョンを描いて,こんな取り組みをしていきます」というメッセージを出せば,学習の遅れに対する保護者の不安の解消にも繋がる。

 

こんな感じになるかと思いますが,いかがでしょうか?ちなみに,このストーリーを書いている私は今,目新しいことがあまりにも無さ過ぎて,読んでくださっている方々に申し訳なく思っています…m(_ _)m 週刊少年ジャンプなら,面白味や新鮮味が無さ過ぎて連載開始直後に打ち切りになるストーリーですね(苦笑)。

 

また,「イシューからはじめよ」では,ストーリーラインの2つの型として「空・雨・傘」と「WHYの並び立て」の2つを提示しています。これも書いて(描いて)みましょう。上記の内容と重複もありますが,御容赦下さいm(_ _)m

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「イシューからはじめよ」p.136より引用

 

①空・雨・傘

 

空(課題の確認)…教室というハコで授業(教科教育)が出来ない。

雨(課題の深堀り)…教室を用いずに,教科教育の学びをどのように実現していくのか。どんな学びのデザインを描いて,何にどう着手すべきか。また,多くの子供にとって特別な「学校の先生」という立場で何が出来るかを考えなければならない。

傘(結論)…学校の先生が自分の目の前の子供たちの実態に応じてテックを効果的に用いることが出来れば,学校というハコが機能不全となる状況においても教科教育の質は維持できる,むしろより高い質の教育を提供することが出来る。

 

詳しくは続編で述べるつもりですが,特に幼い子供(小学校4年生ぐらいまで,かな?)にとって学校の先生,担任の先生という立場は他の大人とは違う特別な存在であると私は考えています。だからこそ,巷に溢れているアプリやサービスの機能では実現できない事が出来るんじゃないかとも考えています。この点を「深堀り」しないと,ここをしっかり考えて形にしていかないと,「今やオンラインのサービスがこれだけ充実しているのだから,学校の先生なんていなくてもいいじゃん」という結論に至る強い危機感も持っています。「コロナで世の中は大変みたいだけど公務員の自分は安泰だ♪」なんてお気楽な考えは,私には微塵もありません。

 

②WHYの並び立て

「なぜ,テックの活用に魅力があるのか」…教室に集まる・手渡しでモノを渡すなどの感染リスクを取らずに,先生と子供,子供同士のつながりを持つことが出来るから。

「なぜ,テックの活用を手がけるべきなのか」…テックを活用した教育の事例は豊富に存在し,その可能性が指摘されているから。また,フェーズRにおける学びのデザインを描いて仕組みを構築しておけば,今後の状況の悪化(更なるコロナの爆発的流行,より死亡率の高い悪質な伝染病の流行など)にも備えることができるから。

「なぜ,テックの活用を手がけることができるのか」…ZoomやTeamsといった無料で使えるサービスが世の中にはたくさんあるから。また,追い風となるような動きもたくさんあるから(例えばGIGAスクール構想こんな動きなど)。

 

 

ここまでが,私が「現時点で」描いているストーリーラインの説明でした。と言うのも,ストーリーラインとは「検討が進み,サブイシューに答えが出るたびに,あるいは新しい気付き・洞察が得られるたびに,書き換えて磨いていくもの」(前掲書p.131より)なのですから。各学年や各教科における検討が進めば(=サブイシューに答えが出せれば),書き換えていく可能性は大いにあると考えています。

 

・・・・・・・・・・

 

次回はいよいよ「ストーリーを絵コンテにする」,換言すれば多くの先生方の関心事だと思われる「結局のところ,誰が,何を,どうすればいいんじゃい!」という疑問への解のカタチを検討していく段階になります。

 

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「イシューからはじめよ」p.34より引用(赤枠は筆者)

私は私の勤務校での立場で考えていきますが,是非皆様も「フェーズY/フェーズR」などこのブログで提示してきた枠組みを活用して各々の立場で考えていただければ,筆者としてこれほど嬉しいことはありません。

 

 

今回も長文お読みいただき,ありがとうございましたm(_ _)m

ツイッター(@dan_makino)に御意見や御感想をいただけると,とても嬉しいです。

 

 <追記>

続編は,現時点(4/20の夜)ではまだ5%ぐらいしか出来ていませんが(汗),私が参考にしている書籍や記事は↓のとおりです。御参考までに!

 

「つながり格差」が学力格差を生む

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  • 作者:志水宏吉
  • 発売日: 2014/04/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
教師の勝算―勉強嫌いを好きにする9の法則

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「資質・能力」と学びのメカニズム

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  • 作者:奈須 正裕
  • 発売日: 2017/05/29
  • メディア: 単行本
 
反転授業

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反転授業が変える教育の未来――生徒の主体性を引き出す授業への取り組み
 

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