つれづれと雑文

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2023年度の自由を817,800円で買った男の話

2017年1月22日(日)、17時過ぎ。新橋駅で電車の座席に腰を下ろした私は、ため息交じりにこう呟いた。

 

「駄目だ、全く歯が立たない・・・」

 

それは、文部科学省のとあるプロジェクトに参画した初回の帰り道での出来事。御縁に恵まれ、委員に任命されて出席した会議だった。集まっていたのは北は秋田、南は沖縄から来ていた、数学教育のプロフェッショナル達。大学教授、○○センター長、県や市の指導主事など錚々たる肩書の方々の中、ヒラの教諭は30名程の参加者のうち、私を含めてわずか3名だった。

 

そのプロジェクトは年間を通して、週末に会議が行われた。10時から17時頃まで(白熱したときは19時頃まで)、合計30回程度。毎回、濃密な数学教育に関する議論が展開された。超一流の方々とその会議に参加出来たことは、今思い返してみるとそれはそれは貴重な経験だった。

 

この会議の議論に加わる中で、私は己の実力不足を痛感することになった。議論の前提として皆が知っている論文や理論のことを、私だけがわかっていない事も多々あった。事実、委員の任期は3年間が既定路線だと言われていたのだが、2年でクビになった。

 

今思えば、当時の自分は自惚れていたのだと思う。3年間SEとして働いてから教員になってこの時点で約10年。その間、論文が表彰されたり、県の研修センターに様々な研修の講師として招聘されたり、民間企業から仕事の依頼を受けて報酬を貰ったり。そういった経験から、「自分は他の教員とは違う」と自惚れていたのだ。そういった勘違いや過信で長く伸びた鼻が、このプロジェクトに参画することで見事にへし折られた。それも、粉々に。

 

同じ頃、職場の先輩が大学院に派遣されることになった。聞いてみると、学費は自腹だが、給料を満額貰いながら1年間は勤務ゼロで大学院で学ぶことができるのだという。

 

なんて魅力的な制度なんだ、と思った。と言うのも、私は上述のとおり3年間SEとして会社勤めをしてから教員になったのだが、転職を決断をした時点では教員免許を持っていなかった。なので、1年間都内で夜間大学に通って単位を揃えて免許を取得したという経験がある(日中は採用試験の勉強をしたり、派遣社員として働いたりしていた)。

 

その1年間の経験で実感したのは、「社会人を経てからの大学は本当に楽しい」ということ。学ぶってなんて楽しいんだ、と。きっと、同じ経験をした人は全員口を揃えて言うでしょうけど(笑)

 

また、この時期に読んでいた「LIFE SHIFT」にも大いに刺激された。リカレント教育の必要性やマルチステージ化する人生への対応。仕事と子育てに追われる慌ただしい日々に一度ストップをかけて、(この本が提唱する)"無形資産"の形成にじっくり取り組みたい。また、じっくり腰を据えて学ぶことで、自分の土台をより強固なものにしたい。そう、強く願うようになった。

 

早速当時の校長に「私も大学院で学びたいです」と直談判に行ったが、返ってきた答えは「まだ早い」だった。それから所属校の校長が変わる度に同じことを訴え続けたが、芳しい答えは返って来なかった。

 

どうすれば了承してもらえるだろうかと考えた末の1つの答えが、「もっと組織に貢献しよう」だった。学校に、組織に貢献して校長にその働きを認めてもらえれば、希望を叶えてもらえるのではないだろうか。そう考えて、行動に移した。特に、コロナ禍への対応(オンライン授業など)では、同志の先生達と共に組織全体のコロナ対応を推進した。たとえばこんな感じで↓

 

dan-makino.hatenablog.com

 

そして、ついに言い始めて4人目の校長にOKをもらったのが、2021年の夏。そこから大学院の説明会に足を運び、ツテを頼って県の選抜試験の過去問を入手し、勉強を始めた。選抜試験は、教員採用試験のような問題で、いわゆる教職教養の勉強が中心だった。2022年の夏に県の選抜試験(筆記試験&小論文&面接)、秋に大学院の入試(小論文&面接)があって、幸いにも2023年4月に県からの派遣という形で大学院に入学する権利を得ることができた。

 

ここで、このエントリのタイトルの意味を説明しておこうと思う。817,800円とは、入学金282,000円と年間の学費535,800円の合計金額のこと。この金額を払って、私は2023年度、1年間の自由を得た。この場合の自由には色々な意味が含まれるが、一番は「学問の自由」だろう。なお、1日あたりにすると約2,234円となる。仕事を全くせず、学びたいことを学ぶ為の対価として、2,234円は高いだろうか、安いだろうか。どうでしょう?ちなみに、この計算をするにあたって、2024年が閏年なので1日トクしていることに気付きました(笑) あ、あと気になる人もいるかもしれないのでお伝えしておくと、修士2年目となる2024年度は、週4は学校に勤務で週1だけ研修扱いで大学院に行って修士論文を書くことになります。ええ、端的に言うと地獄です^^;(今はそのことは考えたくない…w)

 

・・・正直、大学院になんて行かなくても、このまま勤め続けることはできたと思う。2年後、大学院の修了と共に専修免許を取得して多少給料が上がったとしても、2年間の学費は到底ペイできない。年収が爆増する転職でもしない限り、経済的合理性からは今回の私の選択は明らかに赤字だ。(上述のとおり、学費は自腹)私のワガママを許してくれた妻には、本当に感謝しかない。

 

私が進学するのは数学教育を専攻するコースで、現時点での研究テーマは

「算数科における個別最適な学びの実現に向けた教師の学習支援の在り方
~学習者用デジタル教科書やデジタル教材の活用及び教育データの利活用を通して~」

である。勿論今後大きく変わる可能性もあるが、教育工学からのアプローチで語られることが多いICTを活用した教科教育の領域に、これまで算数数学教育界が培ってきた知見や自分自身がこれまで現場で培ってきた経験を掛け合わせて、上記のテーマに迫っていきたいと現時点では考えている。

 

研究テーマが変わったとしても、己の芯としてブレずに持っておきたいのが「三方よし(良し)」を目指す、という志だ。三方よしというのは、私の地元である滋賀県近江商人が大事にしていた考え方で、商売において「売り手良し・買い手良し・世間良し」を目指すことを意味する。私も自分の研究を通して、「子ども良し・教師良し・社会良し」の三方よしを目指すことを、ここに宣言したい。自分だけを利するような研究ではなく、県からの派遣という形で大学院に行かせていただく以上、大袈裟に言えば公教育全体に資する研究成果が求められているのだいう自覚をもって、日々の研鑽に臨んでいかなければならないと考えている。

 

上述のとおり最初は利己的な動機ではあったが、日々の業務の中で「組織に貢献できる人になろう」と意識するようになって約6年。その間、学年主任を務めたり校外の様々なプロジェクトに参画したりする経験を経て、自分の視座がかなり上がった実感がある。そんな自分が、1年間、自己研鑽に没頭できる自由を得ることができた。これまでも実現すべく行動に繋げてきたつもりではあるが、本当の意味で、この(現時点での)人生理念を実現していこう。今、このブログを書いている2023年4月1日、本気でそう思っている。

 

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・・・ここまでダラダラとした自分語りにお付き合いいただき、ありがとうございましたm(_ _)m 大学院派遣中は、Twitterは鍵付別アカウントに移行します。と言うのも、これまでどおりTwitterではダラダラと日常を垂れ流したいわけですが、「アイツは給料を貰いながら大学院に行っているくせに、遊んでいる!」と県教委に密告されるのが怖いからです。ぶっちゃけ。ここまでこのエントリを読んでくださった方は、私が遊ぶ為に大学院に行くつもりでは決して無いとわかっていただけるかと思うのですが、世の中にはいろんな人がいて、いろんな切り取り方をされてしまうのがTwitterですので…

 

新しいアカウントは @macky20232024 です。どうぞ宜しくお願い致しますm(_ _)m

長文を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!感謝!!